声と性癖
くっそー、兄貴ぶりやがって。
兄貴だけど。

どうしても気になって、楓真はその日の夜、涼真が帰ってきて部屋に落ち着いたと思しき時間に、涼真を訪ねた。

「聞かせて」
「ん?何を?」
「笑い声のことだよ」

パソコンを構っていた涼真が、楓真の方に顔を上げる。
「ま、お前には話していいかもな」
「その前に、聞いてもいい?あ……の、涼真兄ってさ……その……」

「経験済だぞ」
ふぉぉぉ……!マジか?!
もはや、英雄。
尊敬の対象でしかない。

「ただ、比較的早く、ダメになったけどな。どうも、僕は性癖があるようだ」
「せ……性癖?」

経験済、と言うだけでも驚きなのに、さらりと性癖などと言い出されても、楓真には衝撃でしかない。
けれど涼真が真剣な様子なので、楓真は大人しく聞くことにした。

「ひとつは声だ。この前笑い声の話をしただろう?で、声を褒めたら、なんなのそれと言われた。僕の声の好みはかなり細かいようだな。好きなトーンがある。さらに顔はキレイだけど趣味が変とまで言われたな」
「ひとつはって言ったよな?他にも……?」
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