声と性癖
涼真は楓真の方を向いているので、結衣からはその顔は見えていない。
見せてやれよ。
その、子供のようなドヤ顔を!!
そして、幻滅されてしまえ!

しかし楓真の心の中の声は通じなかったようで、3人で和やかに夕食のテーブルを囲むことになったのである。

結衣のビーフストロガノフは、とても美味しかった。
生クリームを入れていて、ハヤシライスほど味に飽きが来ない感じで、ローリエの香りが強く、口当たりがさっぱりしている。

たしかに無性に食べたくなる味というのも、納得だ。

マンションが水浸しだった光景を見た時は終わった……と思ったが、来てよかった。

そんな気持ちのままシャワーを浴び、水をもらおうとキッチンに入ろうとすると、涼真が後ろから結衣を抱きしめていて、顎に指を置いている。

そのまま、顔を持ち上げたらキス……の雰囲気だ。
楓真は思わず、キッチンの入口で足を止める。

「涼真さん……ダメ……」
楓真は、ばっと口元に手をやった。
やば!顔、赤いかも。

……ってか、なに、いまの?!
ダメ?あの声が?
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