声と性癖
「涼真さん?ご飯、食べれますか?」
「……ん、結衣さん、食べさせて?」
「……。」
えーと、うん、体調悪いしね。

結衣はうどんを少し細かく切って、レンゲに乗せる。
ふー、と冷まして涼真の口元に持っていった。

「はい、あーんしてください?」
「幸せ過ぎて、死ぬ……」

先程から、優しい結衣に涼真はメロメロなのだった。
風呂上がりでほこほこしていて、部屋着の結衣さんのレンゲを持って、あーんとかしてくれるやつ……なんで、今熱とかあるんだ。

結衣にしてみれば、いや、熱があるからやっているんだけどね?と突っ込みたいところだ。

絶対的に完璧なシャッターチャンスなのに!!

涙をのんで、やむなく、心に刻み付ける涼真だ。

「ん?涼真さん?」
「いえ、なんでも……。一瞬、だだ漏れただけで。……ん、結衣さんおいしいです。食欲なかったけどこれなら食べれるかも。」

「本当?じゃあ、もう少し食べましょうね。お薬飲まないといけないから。」
鍋の中身をふーふーする、結衣だ。
「はい、もう一口どうぞ?」
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