声と性癖
「はあ……もう、死んでもいい……」
「え?死んじゃ、やですよ。それに熱くらいじゃ、死なないから。他にもどっか痛いとかありますか?!」
いやもう、この可愛い生き物に萌え殺される……。

ぼんやりしている涼真に、薬を飲ませて、結衣はさっさと布団に放り込む。
涼真は布団の中から、手を出して結衣の指を掴んだ。

「結衣さん側にいて?なんか話してください。」
「なんでもいいの?」
「なんでもいいです。今度こそ、約款でも構いません。」

結衣も病気で弱っている恋人のおねだりを冷たく拒絶することは出来ない。

「じゃあ、仕事を持ち帰ってきたので、それでもいいですか?」
「はい。声だけ聞けたらいいんです。」

涼真はなにも言っていないけれど、布団をポン、ポン、と優しく叩きながら、柔らかい声で結衣が会議資料を読み始める。

「えーと『当センターの今後の課題について、及びエスカレーション事案の対応等……』」

てか、本当にこんなのでいいのだろうか…?

しかしそれで良かったようで、5分も読んだら涼真は寝息を立て始めた。

< 255 / 270 >

この作品をシェア

pagetop