声と性癖
完全に佐野のイタズラなのだが、まさか結衣が味見で酔っ払うことは、想定していなかったのだろう。

……ったく、あの人は……。
「結衣さん、酔ってしまったんですね?」
「酔ってませんっ!だって、私、涼真さんのこと、看病しないと……」

熱っぽい目で結衣に見られて、涼真が抵抗出来るわけがなかった。

すたすた立って、涼真はクローゼットに向かう。

「結衣さんがこのナース服を着て看病してくれたら、絶対にすぐ良くなると思います。」

にこにこしながら、涼真がナース服を手にしている。

「かわいー。でもそんなん出てくるって、ええっと……涼真さん、病気ですね。」
「そうですね、ですから看病して下さいますか?」
「うん。看病します!」
「きっと元気になると思いますよ?」

……どこが?なにが?
今は元気じゃないとでも、言うのだろうか。

しかしここに、今突っ込めるものは存在しない。

「じゃあ病人の人は、ベッドに戻りましょうね?」
笑顔で結衣が首を傾げると、涼真は目をキラキラさせて頷いた。

「着てくれるんですか?」
「じゃあ、今日は私が看護師さんになって、看病してあげますね?」
「結衣さんっ!」
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