声と性癖
「熱は下がったみたいですけど、まだ無理しちゃダメです。だから、今日は動いちゃダメ……」

え?え?
心の中で戸惑う涼真だ。

涼真は仕事柄、戸惑ったりクライアントのトンデモ発言が飛び出しても、動揺しない術を心得ている。

そのため、今のこの結衣に、正直嬉しすぎて逆に戸惑うのだが、動揺は一切出さず、むしろこれはどうなるのだろうか……と経過を見守ることに決めた。

通常とは違うことが起きた場合は、まずは現状を把握することが肝要なのだ。

つまり何が起きたかというと、2人のプロフェッショナルのプロ根性が発揮されてしまったわけである。

ある意味、ゴングがなったようなものかもしれない。

「病人なんですよね?ダメですよ、安静にしてなきゃ。」
うふふっと結衣が笑う。

涼真も大人の微笑みを浮かべた。
「せっかくのその衣装、触っちゃダメとかないですよね?だって結衣さん、僕が体調を崩すことなんて、ほとんどないんですよ?と、いうことは結衣さんのこんな格好……そうそう見れない。」
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