声と性癖
「少し、強引にしました。」
そっ、と頬を撫でられる。

分かってるんじゃん。
「そんな、可愛い顔で見ないで下さい。」
「蓮根先生、綺麗な顔ですよね。」

「そんな事はどうでもいいんです。一つだけ、教えてください。結衣さん、僕の顔に別に惹かれてはいませんよね。」
ん…まあ、綺麗とは思うけど。

「顔…って、人はそれだけじゃないですから。」
「そうです。顔だけでも、声だけでもない。僕はあなたの知的で、美しくて、安心感のある声に惹かれました。そして、こんな対応をしてくれるのはどんな人なんだろうと思って、昨日は、本当に衝撃的でした。今日も。」
「今日?」

「そのオフホワイトのニット、とても可愛いですよ。」
「普通です!」

「あなたの、その清楚で、上品な雰囲気にとても似合っていますよ。」
こ…声が、車内に響いてる。

「蓮根先生…」
「はい?」
「っ…近い、です。」
< 41 / 270 >

この作品をシェア

pagetop