声と性癖
「ドライブ、好きなんですよ。」
確かに、車の選択からして、そうなのかもしれない。

1日、一緒の時間を過ごして、最初ほど、蓮根には警戒しなくなった結衣だ。
「お言葉に甘えてしまって、いいんですか?」
「あなたなら、どれだけでも甘やかしたい。」

「もう!すぐ、そういうこと言いますね。では、お願いします。」
住所を言うと、蓮根がそれをナビに入力している。

「2時間、か。結衣さん、疲れたら休んでいて下さいね。」
「え?往復4時間ですか?それ、申し訳ないです。やっぱり私、その辺で…」

「結衣さん。」
「はい。」
「それ以上言ったら口を塞ぎます。」

え?やだ、怖い。
「塞ぐって…」

事件?事件なの?
結衣の頭の中をサスペンスな曲が流れる。

「キスで。僕はあなたの声が好きですけど、それを紡いでいるこの唇、味わったらどんな気分でしょうね?」
ぞくぞくっ、とする。
< 43 / 270 >

この作品をシェア

pagetop