声と性癖
その後会社で仕事をしながら、結衣の会社の代理店用のページを開く。

税理士と金融機関とは切っても切れない。

蓮根の場合は、顧客の対応もほぼ事務所で対応する事が、ほとんどだ。
けれども、場合によっては保険会社を噛ませた方がいい、という案件もあるため、別途、会社を作り、代理店登録しているのだ。

代理店研修…。
出たことはない。

けれど、高槻結衣の情報を集められるかも知れない。
そう思って、普段なら参加しない研修に参加したのである。

行ってよかった。

──あの高槻結衣との出会いは運命的だ。
蓮根はそう思った。

偶然、帰りに寄った割烹で、蓮根が惹かれた声の持ち主と、偶然出会う。
こんなことは、運命でもない限りは有り得ない。

しかし、その偶然を偶然だけで終わらせるつもりは、一切なかった蓮根である。

結衣の電話番号を登録し、結衣に会いに行った。

せっかく出会った運命の人だ。
逃がすつもりはない。

一緒に出かけ、食事をし、同じ時間を過ごす。
その中で、彼女に幻滅するようなことがあれば、それで終わりにすればよいことだった。
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