声と性癖
「車は?」
「マセラティとのことです。」
マセラティはイタリア産の高級車である。

「それはないわ。了解。」
結衣は大きく息を吐く。
ヘッドセットを付けて、近くの空いている席のパソコンにログインした。
……よしっ!

「お電話代わりました。上席の高槻と申します。」
結衣は画面上の名前を確認する。
名前は蓮根涼真《はすねりょうま》。

読み方も間違えないよう、結衣は何度も画面に目をやった。

「蓮根様、今、係の者から伺いました。代車をご希望とのことですね。」
『至急、同等のものを用意して欲しい。』
「お急ぎのところ、申し訳ございません。今、お探ししておりますが、同等の車種が難しく、今すぐのご用意ですと…」

結衣はパソコンで、検索をかける。
ドイツ車の高級車か、国産高級車の2択でしか用意はない。
その車種を先方に伝えた。
    
「お車、ないと困りますよね?こちらにつきましては今すぐ、お手配させて頂きます。」
まずは相手の気持ちに寄り添う。
そして、出来ることをハッキリ伝える。
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