声と性癖
「結衣さん…。会いたかった。」
きゅっと胸の中に抱き込まれると、つい、ほだされそうになる。

くんくんくん…
ん?

「あ、の…何してるんです?」
匂いを嗅がれているような気がするのだけれど。

結衣は蓮根をがっ!と引き離す。

「いえ、あなたは声だけじゃなくて、匂いも素敵なんです。」

無理くり引き剥がされたからって、そんな切ない顔してもダメだ!
なに、その引き絞るような声…っ!!

「つい…。」
ついって何だ、ついって。

「行きましょうか?」
結衣は笑顔を向ける。
「はい。」

なんだろうか?
出発前からどっと疲れたのだけれど。

「暑かったり、寒かったらすぐ言って下さいね。」
ホント、完璧!なのに。
匂いとか、嗅ぐか?!
久しぶりに会ったら、エスカレートしてない?!
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