声と性癖
蓮根は眼鏡を掛けてから、エンジンをかける。
「あれ?目、悪いんですか?」
「少しだけ。普段はいいんですけど、運転する時はかけるようにしています。あと、紫外線カットも。」

「ドライブ、よく行くんですか?」
「運転は好きなんですけどね、なかなか時間が。だから、今日は運転する口実も頂けて、結衣さんに感謝していますよ。結衣さん、運転しないんですか?」

「免許はあるけど、運転、しないですねえ。今のところも会社までは徒歩で行けるし。」
会話は本当に普通に楽しめるのに、どうしてところどころ変態チックなんだろうこの人……。

「歩いて?」
結衣は会社まで、歩いて行ける距離のマンションに住んでいるのだ。

「まあ、何かあったら、すぐ、行かなきゃですし。公共交通機関が止まってるからコール受けません、てのはちょっとね。」

そう、スタッフが出てこられないような状況になっても、結衣達は対応しなければならない、と思っているから。

「真面目なんですね。」
それを聞いた蓮根は、感心している。

「一応、他よりお給料頂いてるので、そんなことくらいはしないと。」
「責任感が強い。素敵ですよ。」
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