声と性癖
7.したいからする
そのお寺はさすがに景勝地と呼ばれるだけのことはあり、お茶室までの渡り廊下から見る外の景色は素晴らしいものだった。

少し高台にあり、田畑や海が一望できる。
素朴で、綺麗な風景だ。

一方で、案内されたお茶室から望む庭は、完璧に手入れされており、先程の素朴な風景とは違う。
お寺の人がお茶の用意をしてくれている間、2人で並んで座って、庭を眺める。

とても、静かな時間。

結衣には初めての経験だったけれど、その清浄な雰囲気は良いな、と思う。

その後、お茶を頂きながら、庭などの解説をしてもらい、結衣がお茶の作法が分からないと言うと、丁寧に教えてもらいながら、楽しい時間を過ごした。

「どうでしたか?」
車に乗る時にそう聞かれて、
「とても、素晴らしかったです。ありがとうございます。」
蓮根がにこりと笑う。

「喜んで頂けて良かった。」
あ…。
結衣はどきっとする。
蓮根が本当に嬉しそうなのが分かるから。
心からの素直な笑顔は本当に綺麗だ。
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