声と性癖
「可愛すぎです。そんな目で他の男を見てはいけませんよ。」
「分かんないです。」
「今みたいな表情です。」

改めて、ぎゅっと抱きしめられる。
「ぎゅっとされるのは、嫌?」
結衣は首を横に振る。
    
むしろ、安心する。蓮根の胸は広いし、暖かくて、いい香りだし。

「キス、してもいいですか?」
と顔を覗き込まれる。
近いその表情は、イタズラっぽい感じだ。

「やだ。」
「それがやだ、の顔?目、潤んでて、ほっぺた真っ赤なのが?」
からかっているのかと思ったら、蓮根は意外と優しい顔で、結衣のことを見ていて、結衣はどきんとした。

「ねえ?覚えてます?声が好きだけど、あなたの声を紡ぐ、唇を奪いたい。嫌なら、本気で抵抗して?でなきゃ…」
奪いますよ?と囁かれる。

「…んっ…」
「そんな声聞かされて、僕が何もしない訳ないですよね?」
こっち、と手を引っ張られて、車の後部座席に乗せられる。
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