声と性癖
そうなのだ。
強引にしてしまうことも出来るはずなのに、前から、際どいことを言っても、蓮根は強引にしてしまうことはない。

「秘密です。そうですね、あなたが嫌がることは、したくない、と言いますか。」

そんなん言ったら、最初から、最初から…?
ん?
まさか、本当に、嫌だと思ったことはない?!

「どうか、しました?」
「いえ…」
嫌って思ったことなかった!1度も!

「何か、考えたんでしょう?」
「いえ、なんでもないですっ。」
「じゃあ、キス、しましょうか。」
なんか、わざと意地悪されてる気がしてきた。

キス、しましょうか、と言われる度に、すでにされているように思えてしまう。
「嫌なら、本気で抵抗して。でないと、しますよ。」

「ずるいですっ…」
「ずるくていい。そうですよ。僕はずるいから、あなたはそれに流されただけなんですよ。」

蓮根はにっこり笑って、両手で結衣の顔を挟んで、その端正な顔を近づけてくる。

「んっ…!」
最初は柔らかく重なった唇。
何度も角度を変えて柔らかく触れるだけ。
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