声と性癖
「ねぇ?口を開けて?舌を出して?」
言われるままに、結衣は口を開け、震える舌を蓮根に差し出す。

「いい子だね。すごく、色っぽい。」
「っ…は…」
「気持ちよくしてあげる。」

耳朶をくすぐる声に、結衣は全身がぞくんとした。
ベルベットのように、柔らかくて、触りのよい舌で、絡め取られて、吐息まで啜りとられる。

先程までのキスは、キスではなかったのではないかと思うくらい、官能的。

気持ちよくしてあげる、はその言葉通り、口の中で、蓮根が触れていないところはないのではないかと思うくらい、くまなく探られる。

「も…無理…。」
「気持ちい?」
こくこく、と結衣は必死で頷く。

「結衣さん…可愛い…。初めはね、あなたの声に惹かれたんですよ。」
蓮根の唇が頬から、耳へと移っていく。

「声が、好みで。」
「っ…!」

「つまり、この声、すげーエロいなって思ったんですよ。仕事モードのこの声、この上品で、澄ましているこの声を乱れさせたいって。」

そんな風に思われていたのか、と思うと、カッと頬に朱がのぼる。
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