声と性癖
「現実のあなたは想像以上でしたけど。それが、僕にとって、どれほどの喜びだったか、あなたには分からないでしょうね。」

今も…と背中を抱いていた手をするすると、身体のラインに沿って撫で降ろしていく。

触れるか、触れないかの柔らかい感触はかえって、感覚を鋭くさせてしまって、触れるとびくっと身体が揺れるのを止めることが出来ない。

「…ね?こんなに、感じやすくて、身体までエッチなんて、ずるいのはあなたの方ですよ。こんなの、見たら、絶対誰にも渡したくない。」
「そんな…の…。…ん。」

「声が理想で、見た目も好みで、しかも、こんなに反応してくれて。手放せる訳ないですよ。」
甘い言葉をこんなに囁かれて、結衣もどうしていいのか、分からない。

ただ、必死で蓮根の服を掴んでしまう。そうしていないと、溺れそうだ。
「っ…あ、もう、や…」
「何が?」

蓮根に熱を孕んだ目で、嬉しそうに顔を覗き込まれる。
すいっと、顎を掬われた。
「もう、我慢出来ないのは、こちらですよ。」

反射的に俯こうとしても、しっかりと顎を抑えられているので、蓮根はそれを許してくれない。
    
「ダメです。僕を見てて。ああ、そんな顔をして。」
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