声と性癖
蓮根が眼鏡を外して、それをことり、とデスクの上に置いた。
ふー、と軽くため息をつき、結衣に柔らかな笑顔を向ける。

本当に忙しい人なのだな、と思う。

「ご飯、準備出来ていますよ。」
「え?」

リビングを通り抜けて、ダイニングに入ると、テーブルには色とりどりの料理が並んでいた。

「メインはローストビーフなので、冷めても大丈夫だそうですよ。」
どうぞ、と椅子を引かれる。

「ありがとうございます。」
蓮根は本当に紳士だ。

2人で席について、いただきます、と手を合わせる。
食事はどれも、とても美味しかった。

「よく、来るんですか?こちら…」
「いや、…ゆっくりすべきだと思って、買ったんですけどね。実は、1度も来たことはなかったんですよ。だから、今日は来られて、良かった。」

1度も使われていなかったのか……。
それほどに忙しい人が、今日は結衣のためにいろいろしてくれたのだ。

「私がベッド、占領してしまって、ごめんなさい。」
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