声と性癖
「いえ。本当は、一緒に休もうか、とも思ったんですけどね、何もしないでいられる自信はなかったし、あなたも、疲れているんだろうな、と思ったので。」

蓮根は強引なだけではなくて、結衣のことを思いやってくれている。

──なんか、ちょっと残念でなければ、完璧なのに……っ。
優しくて、紳士で、思いやりがあって、顔も整っていて、社会的地位もしっかりしている。

「結衣さん…」
「はい…?」
「今、誰か、お付き合いしている人はいますか?」
そう言って結衣を見つめる蓮根の瞳は切なそうで、真っ直ぐだ。

結衣はどきん、とする。
「い、…まはいません。」
    
「僕と、正式に、お付き合いして頂けませんか?今日、一緒にいて、あなたとそうなりたいって、思ったんです。」

お付き合い?

「え…でも、涼真さん…私で、いいんですか?」
「まだ言わせる気ですか?あなたしかいらないんですよ。」

きらきらと煌めいた目でそんな事を言うので、その目に、結衣は吸い込まれそうだ。
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