ずっと気づかなかっただけ。
「いくら結城が電車1人危ないからって俺に頼んでくるあの人がどうせ手出さないだろって言ってるみたいで…少しムカついた。」

ん?

私が首を傾げて意味を理解しようとしてると、

「…千景先輩ばっかずるいってこと。…もっと俺にも構ってよ。」

太一は私が顔を上げるのを手で押さえて、

小さな声で言う。

「…太一も大切な友達だよ?」

「友達、ね。」

少し空気が変わって、

どうしようかなと考えてたところで電車が最寄りで止まる。

太一が降りようとしないから慌てて手を引く。

「太一っ、着いたよ、」

「そーやって無防備だから…」

太一が何か言ったかと思えば、

私の手を取り直して、

今度は私が引っ張られる。

えええ、立場逆転!

背の高い太一は歩幅も私よりあって、

どんどん進んでく。
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