ずっと気づかなかっただけ。
「ちょ、離してっ、早いってば!」

足がもつれそうになりながら、

太一に声をかける。

改札もあわてて自分の定期をかざして、

何故か部室の方まで引っ張られながら

太一についてくと、

急に今度は誰かに引かれて、

手がちぎれそうになる。

「わっ、」

「太一、わかるけど、これ、千景のだから。」

後ろを振り返ると、

いつも通りの表情のクマさん。

あくびをしつつ、

太一の掴んだ手と反対の手を掴んでる。

もぉぉ、何事!

ようやく止まってくれた太一は、

「千景先輩のって、今更なんですか。」

「お前聞いてないの?」

クマさんに質問して、

クマさんは驚いたのかあくびをやめて、

私の方を見る。
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