ずっと気づかなかっただけ。
早く、ここから離れたい、なんて言えない。

しばらくまた下を見て、

会話が終わるのをまつ。

あ、

チカくんの手が離れる。

美波さんが何か言ったのか、

手を離して、自分のカバンの中の何かを探してる。

…今なら、離れてもいいかな。

ポケットに定期と携帯とが入ってることを確認して、

何かのノートを2人で覗き込むチカくんから離れる。

…これが、嫉妬というやつなのかな。

美波さん、綺麗だなぁ。

1人で駅の近くのお店がたくさん並んでる道を歩くと、

途中でケータイが震える。

確認してみると、

チカくんからで、どうしようかと思ったけど、

今顔を合わせたくなくて、

気づかないふりをしてケータイをポケットに戻す。

「あれ、でないの?喧嘩?」

急に声をかけられてびっくりして顔を上げると、

知らない男の人たち。

「うぉ、めっちゃ可愛い。大当たり。」
「カラオケ行くんだけど、どう?てかいこ?」

返事をする間もなく囲まれて、

そのうちの1人が私の手を掴んで歩き出す。

「やっ、離してっ、」

暴れるけどびくともしない。
< 147 / 241 >

この作品をシェア

pagetop