ずっと気づかなかっただけ。

「声も可愛いね。1人で歩いてると危ないよ?」

気持ち悪い、

怖い。

身体が拒否反応を示す。

「っ、離してっ!!」

「暴れない、暴れない。」

全く相手にされなくて、

周りを見ても、みんな見ないふりをして通り過ぎていく。

私が、チカくんの電話を無視したから。

チカくんから離れたから。

足を踏ん張って、

手を振り回して、

拒絶するけど、

カバンも何もなくて、ぶつけるものもないし、

逃げる術がない。

ポケットで再びケータイがなる。

「あっ、」

掴まれてない方の手でケータイを取って、

電話に出ようとすると、

電話が奪われる。

「返してっ、」

「『チカくん』と喧嘩したの?」
「俺ら優しいよ?」

1人の男の顔が近づいてきて、

周りが煽るような楽しそうな声をあげる。

全然楽しくないっ、

私は思いっきり息を吸って、

近づいてくる相手から、顔を背けて、叫ぶ。

「チカっ、くん!!!」

「ちょ、うるさ。口塞げよ。」

1人の焦った声で近づいてきてた男が顔を顰めて、

手で口を塞いでくる。

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