ずっと気づかなかっただけ。
また視線を人混みに戻すとチカくんがまだこちらを見てて。
手を振って笑顔を作る。
そんな私に太一が不思議そうに視線を追って、
「げ。」
露骨に嫌な顔をする。
「千景先輩に、絶対2人になるなって言われてたんだよなぁ…悪い、俺が説明しとくから…」
太一の言葉に笑う。
「太一は優しいねぇ、迷子の原因私なのに!」
太一もチカくんに軽く会釈してて、
チカくんは太一をジト目で見てたけど、
太一は気にしないふりをして、
私に話しかける。
「…行こうか。」
「うん!花火間に合うように急ごっ!」
チカくんに手を振って、
2人で早歩きする。
人混みに戻ると、
また迷子になりそうで、
慌てて、
周りより頭ひとつ分高い太一を必死に追いかける。
「結城、ここ、掴んでて。また迷子になられたら流石に困る。」
太一が苦笑いして、
自分の服の裾を指さす。
「ご、ご迷惑をおかけして…」
そっと太一の裾を掴んで2人で人混みを抜けていく。