ずっと気づかなかっただけ。

しばらく歩いて、

『花火がそろそろ打ち上がりますっ!』

っていう合図を背に、

ようやく静かな場所に着く。

「あ、いた。」

太一の視線を追うと、

手を振るタケくん。

「ごめんっ、お待たせ!!」

走って駆け寄ると、

「間に合ってよかったよ!」
「太一、真白のお世話ありがとう」

笑いながらいうタケくんとなっちゃんに太一は苦笑い。

「お世話って…」

「いやいや、その通りです!ごめんね、太一、ありがとう!」

太一にお礼を伝えて、

なっちゃんたちが敷いてくれてたビニールシートの上にお邪魔する。

なぜか固まった太一に、

「太一、始まるよっ!ここ、どうぞ!」

隣のスペースをあけて、手招きする。

「…あ、うん、さんきゅ」

太一が横に座って、

みんなにジュースと焼きそばなんか配っていく。

「ジュース薄くなってるかも…氷ほとんど残ってない…ごめん〜」

配るときの入れ物の音に落ち込む。

「へいき!真白、こぼさないようにね、はい、これ膝にかけときな!」

なっちゃんがタオルを膝にかけてくれる。

…なんか、おかあさんみたい。

クスクス笑う私に、

「…笑い事じゃなく、結城こぼすでしょ。」

と太一がぽそりとつぶやいて、

何も言えなくなる。

…たしかに。気をつけよう。
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