ずっと気づかなかっただけ。

なっちゃんとタケくんが何か話してるけど、

そろそろ花火開始のアナウンスと、

屋台とかある通りより静かとは言え、

人がまばらにいて、

お酒も飲んでる人がいるのか、

あまり隣にいても声が聞こえない。

「結城、何食べる?」

太一が袋を漁りながら声をかけてくれる。

「りんご飴食べたい!」

いつもより少しだけ近い距離になるけど、

声が聞こえないからって太一もわかっててくれて、

何も言わない。

そのまま花火の話をしてると、

急に大きな音がして、

夜空におっきな花火。

「わぁ!」

そこから連発する花火に釘付けになって。

ひと段落した少しの間で太一にすごいねって声をかけようとしたら、

太一はもうこっちを見てて。

数秒間目が合う。

「えっと、どうか、した?」

私の目が先に泳ぐ。

「ん、噛みしめてた。…あと、整理してた。」

噛みしめ…?

何を、とは聞けず。

整理?

これも何を、とは聞けなかった。

太一の瞳の中に花火と自分の影。

何も言えなくなって、

花火に視線を戻した。

…チカくんは、美波さんとみてるのかな。

< 220 / 241 >

この作品をシェア

pagetop