黒崎先生、質問です
「常連さんなんだけど」
「あぁ、黒崎さんって人ね」
常連さんと言っただけで誰の事を指しているのか理解した様子。
姉には何度か高身長イケメンの常連が出来たことを話したことがあった。
イケメン彼氏がいる姉は特に黒崎さんに興味を持つことはなく、いつも「へー」だったり「そうなんだ」くらいしか言わない。
「今日もお店に来て、また本を買っていったの」
「へー」
「今日は初めて官能小説をオススメしてみたんだけど引かれなくて、少しびっくりしたって言われた」
「へぇ…って、アンタ官能小説勧めたわけ?ウケる」
「それで、バイト先の人に黒崎さんが私に気があるんじゃないかって話になって、気があるに5万賭けてもいいなんて言い出して」
「あ、じゃああたしも気があるに5万」
「…お姉、ふざけないでよ」
またそうやって私をからかうんだから。
「もういい、おやすみ」
「寝るの?おやすみ林檎」
いつもより割と真面目なトーンで話したつもりだったのに、結局こうだ。
少しモヤっとした気持ちを払おうと、ベッドに腰かけて鞄から本を取り出し、しおりを挟んだところからまた再開する。
残り半分もないページを1枚2枚と捲っていると、ふと頭を過ったのは黒崎さんの顔。
…彼も今頃、私が勧めたあの本を読んでいる頃だろうか。
そんな事を考えた。