黒崎先生、質問です
顔の知らない理解者



ほのかに香る木の香り、ページを捲る音、文字を指でなぞり頭の中に入ってくる瞬間。

私の一番好きな時間。


誰にも邪魔されず、静かな空間で読むのが一番なんだけど、


「釘宮さんまた本読んでんの?」

「今度は何ぃ?」


こうやってたまに邪魔される時がある。


本から目を話して顔を上げれば、私にかかる影とどこか楽しそうな歪んだ顔をしたクラスメイトの女子2名。

なんで、どうして絡んでくるのかは分からないけど。


「なになに〜タイトルは、赤に染める?うわぁ暗」

「どーせつまんない内容でしょ」


この人たち、何言ってるの。ふざけないで。

“つまんない”

その単語に私の中で黒いモノが腹の底から沸々と煮えたぎった。


少なくとも、私にとってこの本はつまらないものなんかじゃない。

読んだこともないくせに想像だけで言葉を並べて、本を、作者を、そしてその本を読む読者を馬鹿にするなんて最低の所業だ。


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