ハロウィンの奇蹟
「ねぇ本当に何も思い出せない?」


 私は歩きながら同じように隣を歩く幸子さんの顔を覗き込んで聞いてみる。

 すると彼女は本当に申し訳なさそうに力無く俯いた。


「ごめんなさい…本当になにも…」


 今にも泣き出さんばかりの雰囲気と消え入りそうな言葉に私は慌てて「いいの!大丈夫!」と励ます。

 突然の事に慌てた声は思いのほか大声だったらしく道行く人の視線を集めた。
 


 …痛い。
 この視線やっぱり慣れない。


 というのもこの大通りを行き交う人には私達は見えていない。

 いや、厳密にいうと『私達』でなく『私』しか見えていないはず。
< 10 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop