ブラック クリスマス


少しだけ滲んだ視界で、いっそう眩しくイルミネーションが光り輝く。


きっとそう。
そう思わないと、私の気持ちの行き場なんてもう無いのだから。


だからこそ、この感情をぶり返させるこの季節が、
この空気が、この空が、
この石鹸のような、
安心させる優しい香りが、

大嫌いだ。


きっとこうして、彼の好みも、笑顔も、
横に並んだ時どんな角度でひっそりと彼の横顔を見上げてたのかも、
掌の温度も、少しだけ硬いその皮膚も、
全て。

ゆっくりと忘れていくはずだったのに、香りだけはカギとなってずっと、
彼を忘れさせてはくれない。




サンタクロースに思わず願った事もあった。

もう一度だけ彼に会いたいと。


どうか。
サンタクロースがいるならば。

良い子にはなれなかったけれど、
子供みたいな無垢さも、もう無いけれど、
どうか。

どうか、彼の香りを忘れさせてはくれないだろうか。



*ブラック・クリスマス Fin.*


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