ブラック クリスマス


悴んだ足の指の先が、次第にその冷たさにも慣れてきて、
まるで自分みたいだな、と詩人も思わず引いてしまいそうな事を考えながら、
いつも通り過ぎる信号が点滅を始めたのを、ぼんやりと佇んで待っていた。

何事もなく、信号は青に変わって、
信号機や電線から溶けかけた雪がぽたぽたと冷たい雫を落として。

それを避けるように、足早に歩く。

つもりだった。

ふっとすれ違った時に鼻を掠める、少しだけ甘い香り。


思わず横断歩道の真ん中で足を止める。

……いや、足が急に石になったように重たくて、壊れた機械のように、
きしんだ音が聞こえるようなぎこちなさで後ろを振り返った。


ふっと息を吐いて、ゆるりと視線を落とす。

あぁ、そっか。そうだよな。



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