【完】傷だらけのプロポーズ
01「運命が目を覚ますとき。」
01「運命が目を覚ますとき。」
「美しさは心から生まれます」
株式会社 水鏡堂から産まれ、10年前に発売された百貨店の人気化粧品ブランド「LILI BULE」の女社長である結城 美琴は年明けのパーティで声高らかにそう言った。
肌は瑞々しくシミ一つ見当たらない。 目もくりくりとして大きく、そこからバサバサの睫毛が伸びる。
下手したら下品になりがちな赤リップも、日本人離れしたぷっくりと厚い唇によく似合っている。
齢50歳を迎えても、彼女のその美しさが衰える事はない。 浮世離れした美しさを持つ彼女が「美しさは心から生まれます」と言っても嫌味にしか聞こえはしない。
「人の美しさは顔や化粧
服装だけでは決まりません。 優しさや思いやり
心から生まれるのです」
高級な洋服に身をまとい、優雅な佇まい。 上品な微笑みを浮かべる。
そこから見える心の余裕。 誰しもが、彼女のような財力と美しさを持っていたとしたならば、美しさは心から生まれると綺麗ごとを並べられるだろう。
彼女はLILI BULEの全社員からの憧れの的だ。 けれど、私は彼女が放つ美しき言葉たちをどうしても素直に受け入れられずにいた。
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