【完】傷だらけのプロポーズ
「人にメイクをして、その人が綺麗になる過程が好きなんだ。 それは君も同じじゃないか? 君の仕事ぶりを見ていれば分かる」
「そうですね。私は昔からメイクに興味があったので――」 とはいえ、それはコンプレックス隠しの為だったんだけど。
「学生時代からずっとメイクに興味があって、色々なブランドのメイク用品を試しました。
今でもコスメマニアなのは変わらなくって、デパートに入ってるコスメから、ドラッグストアに並ぶプチプラの物まで気が付けば買ってしまいます。
お陰で家はコスメの山ですよ」
「美麻ちゃんみたいに研究熱心な社員がうちにいるのは心強い事だけどね。
でも美麻ちゃんは元々顔立ちが綺麗だから、化粧なんて必要ないんじゃないかっていうのが本音だけどね。
素顔の君も見てみたいものだ」
焼きあがったお肉を大河さんがお皿に乗せる。
’素顔’というワードを聞いて思わず苦笑い。
私の素顔なんて見せたら、きっと彼だってドン引きするに違いない。
一見綺麗ぶってはいるが、ファンデーションの下には顔のどのパーツより目を引く大きなあざがあるのだから。