【完】傷だらけのプロポーズ

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遭遇とはいつも突然のものだ。

突然のタクシーのキスで頭に血が上る。タクシーが見えなくなるまで見送って、冬の冷たい風にあたる。 体温が上がったから、すり抜けていく夜風が気持ち良い。

暫くボンヤリとマンション前のエントランスで風にあたっていた時だ。

「大丈夫ですかあ?朝比奈さんってば~。 もぉ…マンション前までタクシーで送って貰えば良かったのにぃ」

「ん~…大丈夫。あ~…気持ち悪い…」

「マンションってここですよねぇ?ねぇってば…」

甘い余韻に浸っていたのに、一気に現実に引き戻されていく。

暗がりの中から高い甘い声が、朝比奈の名前を呼ぶ。 ぴったりと寄り添って、朝比奈の肩を支えるようにもたれ歩いていたのは…。

どこかで見た事のある顔だと思った。 そうだ。朝比奈はいつだってこの手のタイプの女の子を彼女にしたがる。誰がどう見ても可愛くてモテるタイプ。どこに連れて行っても注目をされてしまう女を…。

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