【完】傷だらけのプロポーズ

中学に入って初めて美麻に会って、一目惚れした。何故か美麻の前でだけは俺らしくいられなかった。 いや、俺らしく居たから素直になれなくって、意地悪ばかりしてしまっていた。 それを今更後悔してしまうなんて。

けれど俺が矢面に立って美麻を苛めていれば、美麻に同情が集まり俺以外が美麻を苛める事はなくなるだろう。 けれど、中学二年の終わりには既に顔にあった赤いあざはメイクで隠すようになってしまった。

俺が守らなくても、もう美麻はいじめられない。

『あいつ、ムカつかん?』

けれどその問いかけに美麻は思ってもいなかった返答をした。

『朝比奈はそんな奴じゃないよ』

声しか聞こえなかった。 けれど、美麻の一言でその場の空気が凍ったのは俺にだって分かる。

馬鹿め。こういう時はどんな事を思っても皆の言葉に同調しておくべきだ。 それが正しい人間関係の在り方。誰だって自分が可愛くて、自分の立ち位置を守るために努力している。

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