【完】傷だらけのプロポーズ

そして何故、私はこんな場所に連れ込まれているのだろうか。

「気が強い女だ。 かといって女性が男に力で敵う訳もない。余り無茶な事はしないように」

何故かたしなめられて、ハッとする。 一体どういうつもりなんだろう。 そして何故私の名前を知っているのだろう。

話した事もなけりゃあ、私はLILI BULEのただの社員だ。
そんな私の戸惑いはお見通しだったらしく、彼がゆっくりと口を開く。

「何で俺が君の事を知っているかとでも聞きたいようだね」

顔を上げて口を開けたまま彼を見つめると、妖艶な笑みを浮かべて口角を僅かに上げた。
色気のある男の人だわ。

端正な顔立ちに、口元にあるホクロがやけにいやらしくてセクシーだ。
そして人の心を見透かすように見つめる瞳は、ダークブラウンで優し気でもある。

「本店の売り上げトップで仕事もよく出来ると聞いている。ずっと綺麗な女性だなあと思ってはいたよ。
話をするタイミングは掴めずにいたけれど」

「いえ、そんな…私なんて…」

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