【完】傷だらけのプロポーズ
ああだこうだ社員通行口で朝比奈と話していると、それに気が付いた大河さんがこちらに向かって小走りで駆け寄って来る。
こうやって見ると、大きいのに人懐っこい小型犬のようでもある。 「美麻ちゃん!」と私を発見した途端大きな声を上げてこちらへ駆け寄ってくるものだから、周りからも注目を浴びてしまう。
…それがこの人の良い所でもあるのかもしれないけれど。 ふと彼に目をやると、今日の大河さんはビジネススーツを着てはいなかった。 いつも良い物を身にまとっている彼だけど、パッと目を惹くような明るめのブルーのスーツを着て、中にはベスト。スーツのゴールドのボタンがきらりと光る。
それとお揃いでゴールドのセンスの良いネクタイピンがピカピカと光っていた。 心なしか、髪もいつもよりきちんとセットしている気がした。
大河さんが来た途端、向き合っていた朝比奈はあからさまに嫌な顔をする。
「ごめんね、突然連絡しちゃって。 北海道から帰ってきて一番に美麻ちゃんに会いたくなっちゃって」