【完】傷だらけのプロポーズ
朝比奈の大きな瞳が途端に鋭くなっていく。 口元を引きつらせて笑っているけど、目は全然笑ってはいなかった。
つーか、朝比奈の情報網って副社長にまでいくものなのだろうか。人気者の宿命というか、何というか。 きっと店長か誰かが言ったに違いないんだけど。だってうちの店舗には歩くゴシップ誌と呼ばれる佐江ちゃんがいる。
「あ…ハハ。まあ…付き合っているというか、何というか…」
「朝比奈くんはモテるだろうしね。 うちの会社の社員だ。泣かせるような事はしないでくれよ。
でも少し安心した。朝比奈くんに彼女がいるって知って。
美麻ちゃんと仲が良さそうだから、少しだけ心配してたんだ」
大河さんの言葉に、朝比奈の眉がぴくりと動く。 得意の営業スマイルを取り繕ったまま、次に朝比奈が言う言葉は何となく予想出来る。
「結城さん、止めて下さいよ。 俺がまさかこんなブスとそんな関係なわけないでしょう?
それに真澄ちゃんはこのブスとは違って、すっごく可愛らしい子なんですよ。比べ物にならないですって」