【完】傷だらけのプロポーズ
「頼んでおいたんだ」 そう言って私に手渡された箱はずしりと重かった。 大中小の三つの箱。
彼の考えている事はちっとも分からない。何も知らされずに美容サロンに連れて来られたかと思えば、渡された大きな箱。
何も分からないけれど、その箱の全てが誰もが知り得る高級ブランドだとは分かった。
大きな箱から出て来たのは、ベージュに近い淡いピンク色のワンピースだった。
スカートは膝丈程の長さで、シンプルだけど袖の部分にお花のレースがあしらってあり上品で上質な素材だ。
「へ?これって……」
「取り合えず試着室で着て見てよ。 美麻ちゃんのサイズにぴったりだと思うから」
「でも…」
「いいから。それとも一人で着替えれないなら着せてあげようか?」
「大丈夫…!一人で着れます!」
大河さんが贈ってくれたワンピースは、まるで私の為に仕立て上げられたかのようにぴったりだった。
シンプルだけど品があって、ボディラインはきちんと見えるのに下品になりすぎない。 試着室にあった鏡の中には、綺麗にヘアセットされ美しいワンピースを着ている自分。
似合っている。自分ながらそう思ってしまった。 試着室から出て行くと、大河さんは嬉しそうに口を開けて白い歯を見せながら笑った。