【完】傷だらけのプロポーズ
何故に自分がここにいるのか全く理解が追い付かない。 普通であるのならばいち社員が来れるような場ではない。
行き場がなく戸惑っていると、大河さんは躊躇なく私の腕を引っ張り結城社長の元へと連れて行く。
「母さん、誕生日おめでとう」
「大河ありがとう。 あら、ご一緒にいらっしゃるお嬢さんは?」
思わず背筋が伸びてしまう雰囲気を持った人だ。 遠目からは何度も見た事があったけれど、こんな近くで見るのは初めてだ。
50歳を迎えるというのに間近で見ても肌にはシミや皺も見当たらない。小鳥の囀りのような美しい声に、大きな瞳が私を真っ直ぐにとらえ、そしてやんわりと微笑む。
「しゃ、社長…お誕生日おめでとうございます…」
「ありがとうございます。 大河が女性を同伴させるなんてびっくりしたわ」
「だろうね。母さん、彼女は小田切美麻さん。LILI BULEで働いているんだよ。」
「あらあ、通りで綺麗なお嬢さんだと思ったわ。 いつもお世話になっています」
「いえ、こちらこそ…!小田切美麻と申します。」