【完】傷だらけのプロポーズ
「ふふ。知ってると思うけれど、大河の母です。 それにしても本当に綺麗な子ね~…
それに若さって素晴らしいわ。 大河ったら、こんな素敵な彼女がいるのならば直ぐに紹介してくれればいいのに」
「あはは、彼女はまだ口説き中で。
中々固くって落ちないんだ。 けれど仕事にもすっごく熱心で素敵な女性なんです」
あらまあ、と社長の目はぱちくりと瞬く。 もっと近寄りがたい人なのかなと思ったけれど、近くで見るとより一層華やかで、そして思っていたより温かいオーラで包まれている。
私が見てきた結城社長は、LILI BULEのやり手女社長。 けれど大河さんの前で見せる彼女の素顔は、ちょっぴり可愛らしいお母さんの顔だった。
「美麻さん、自分の息子を余り持ち上げるのもどうかと思うけれど、大河って良い男よ?」
「はは…そりゃあもう…女性社員全員の憧れの的の副社長ですから…」
ひそりと結城社長が私の耳元で囁くように言葉を紡ぐ。
ふわっと香った香水は大河さんと同じ。MISS LILIだ。 同じ香水でも人によって香り方が違ってくる。 けれど、やっぱり親子だ。 何て居心地の良い空気感を持っている人達だろう。