【完】傷だらけのプロポーズ
至近距離で、こんなに美しい人に見つめられるのは嫌だった。 顔を背けたままソファーから立ち上がろうとした時だった。
ぎゅっと彼に手を握られて、上目遣いで見つめられる。 なんて目をするの。 私を見上げたダークブラウンの瞳は少しだけ寂しそうに揺れた。
思わず圧倒されて動きが止まる。 瞬きをする間もなく彼は私を抱きしめた。
むせ返るようなMISS LILIの香りが広がっていく。
抱きしめたかと思えば、唇を掴みキスをされそうになる。 反射的に体を逸らすと、その反動で彼がその場に尻もちをついてしまった。
さっきの私と同じ、えらく間抜けな格好になった彼が声を上げて笑い出す。
「な、何をなさるんですか?!や、止めて下さい!」
何が可笑しかったのかは分からないが、その場でお腹を抱えて笑っている。
この人絶対におかしい。 背筋がぶるりと震えた。
ホテルの部屋に連れ込まれたかと思えば突然抱きしめられ、拒否しなければキスをされていた。
殆ど接点のない女にこんな事をするなんて、相当遊び慣れているに違いない。 このままじゃあ、襲われる。