【完】傷だらけのプロポーズ
09「決別すべき二人。」

09「決別すべき二人。」




『美麻の事が分からない。』 『美麻って結局己を見せないんだよね』 思い返せば、高校時代の達也先輩のメロンパン事件以来、私は他者に決して本当の自分を見せていなかった。

あれ以来誰と付き合っても、どこか心の底まで気を許す事が出来なくって、結局付き合った男達には何を考えているか分からないと振られた。

結婚は諦めかけていた。 私はずっとこのまま変わらないのだと、誰かに気を許す事もなくひとりぼっちで生きて行くのだとどこかで諦めていた。


大河さんと付き合い始めた。
それを奈子に報告するとその週の終わりに卓と朝比奈の家で4人で飲み会を開く事になった。

朝比奈の家に行くのも話をするのも久しぶりだった。 大河さんと付き合った報告をした時もいつものようにおちゃらけて「結城大河は趣味が悪い」とケラケラと笑いながら悪態をついた。

気まずくなるのも嫌だったから。いつも通りの態度を取られて安心した。


大河さんは忙しい人だったけれど、私の為に出来るだけ時間を空けてくれて
仕事が休みの前日の夜には必ず彼のマンションに泊まりにいくようになった。

そうやって一ヵ月は平穏に過ぎ去って行った。東日百貨店はいつのまにか春色に彩られ、華やかな春コスメが化粧品カウンターに並んだ。

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