【完】傷だらけのプロポーズ
彼は大笑いをしたまま、ゆっくりと立ち上がる。
「私帰ります!」
「待てよ」
「そういう事が目的ならば、副社長に抱かれたい女性は沢山いると思うので他を当たってください」
「副社長じゃねぇって。大河だつってんだろ」
中々に話の通じない男らしい。 はたからみた結城大河はとても大人で、もっと上品な人かと思っていた。
これじゃあ、女癖の悪い八田さんと大した差はないじゃないか。
「別にそれだけが目的って訳じゃねぇよ。 さっきも言った通り興味があっただけなんだ」
「興味があるだけで女性をこんな場所に連れ込まないで下さい」
「やってみなきゃ分からねぇ事もあんだろ」
「やってみなきゃ…って…! とにかく私は副社長とそういう関係になるつもりはありませんので、失礼させて頂きます」
「だから、大河だって言ってんだろう」
半ば強引に逃げる形でホテルの室内から出て行った。
追いかけてくる様子はない。