【完】傷だらけのプロポーズ
「かなりの優良物件でしょう?! それにしてもハーフってマジで彫りが深くて羨ましいわ。
絶対赤ちゃん出来たら可愛いよ」
「あ、赤ちゃんって。 奈子ってば話が飛躍しすぎ…!まだ付き合い始めたばかりなのに…」
「そう?全然意識したっておかしくないじゃん。 だって副社長はあんたと結婚する気満々なんでしょう?
私達もう28歳だよ? 今年、29歳になっちゃうんだから。
結婚も出産も全然遅すぎる事ないんだから…」
力説する奈子に若干引き気味ではあるが、言っている事に間違いはない。
「あー…美麻はいいなあー。私も結婚したいのに、出会いが全然ないし。ちきしょー……」
悔しそうに唇を尖らせてビールを口に運ぶ奈子に、思わず苦笑い。
結婚…出産…。今まで全然考えてこなかった。 漠然と私は一人で生きて行くものだとばかり思っていた。
はたから見ればLILI BULEの副社長に見初められるなど、とんだシンデレラストーリーだ。 この私にガラスの靴がぴったり合うかは別として。