【完】傷だらけのプロポーズ
「奈子可愛いから本気出せばすぐに相手も見つかるでしょう。」
「でも、私理想高いから~。 大企業の社長の息子で美麻の大河さんみたいにイケメンだったら即結婚するけどね~」
「だから、結婚なんて全然考えてないってば!」
「でもそれも失礼じゃない?
彼は結婚する気満々なら、美麻も真剣に考えてあげなくちゃ。
そうじゃなきゃ美麻と副社長が付き合ってる事で報われない奴が可哀想じゃんか」
「私と大河さんが付き合っている事で報われない奴?」
奈子の含みを持った言い方。 彼女は少し焦ったようにビールを飲み干して、話を変えるように携帯に触れる。
丁度その時ピコンとメッセージを受信する音が響く。
「卓と夏樹が今から来るって!」
「卓と朝比奈?!」
「うん~。さっき美麻の家で飲んでるって卓に連絡しておいたんだ~
ピザとチキン買って来てって頼んでさ~。」
ごろりと床に寝転んだ奈子はご機嫌で携帯を弄る。
…全くなんという自分勝手な性格だ。そして自由だ。
私のマンションで飲んでいるというのに、家主である私に卓と朝比奈が来るという事を一言も告げずに勝手に家に呼ぶ。