【完】傷だらけのプロポーズ
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都心から少し離れた場所にある1Rマンション。 一応エントランスにはオートロックはついているが、管理人などがいるマンションではない。ごくごく普通の物件だ。
鍵をがちゃりと回した音と同時に、隣の家の扉が開く。 まるで待ち構えていたように、よく知る童顔の意地悪な笑顔が扉から顔を出す。
「おかえり~」
隣人の男は当たり前のように自分の家の扉を閉めて、我先にと私の家へ上がり込む。
「ちょっと…!」
「今日は会社の新年会だったんだろう。 結構早く帰って来たね。」
まるで自分の家のように電気を点けて、ソファーにごろりと座り込むと同時にテレビのリモコンに手を伸ばす。
「朝比奈、勝手に家に入って来ないでよ」
「何だよ機嫌悪いなあ。
つーかお前すっげー顔してんじゃん。さっさと化粧落として来いよ。もう良い歳なんだから、肌に悪いぜ?」