【完】傷だらけのプロポーズ
―――――
「えぇー?今度の休日実家に帰るんですかあ?
私も一緒に行きたい」
「で、でも…予定合うか分からないし」
「いつですか?」
「再来週の土曜日…。真澄ちゃん土曜日は基本的に仕事でしょう?」
「うわあー…!すっごい偶然です…!三か月ぶりに週末休みなんですッ!
ねぇ、私も行ってもいいですか?」
「いや、それは…」
「本当にすっごく楽しみ。朝比奈さんの家族に会えるなんて超感激だし。
それにしてもここのレストランは美味しいですね。さすが朝比奈さん、素敵なお店知ってますね!」
どうして誰も彼も話をきちんと聞かないのだろう。
現在仕事帰り、真澄と食事に来ている。
断れない自分もどうかと思うが、彼女と付き合うなんて一言も言っていないのに…むしろ避けているのに、中々強引な女だ。
美麻の手前、特別な女性だと言ってしまったのが不味かったかと思う。 自分で蒔いた種とはいえ、あの日からずっと後悔している。