【完】傷だらけのプロポーズ
愛されて生きて来た人間には、劣等感などという負のオーラは微塵も感じさせられない。
どこまでも素直で真っ直ぐで、付き合うならばこういう女性が良いに決まってる。
にこにこいつも笑っていて、容姿も良い。 見栄っ張りな俺が好んで付き合ってきた女性のタイプ。 けれど、先は見えてしまっている。今までだってずっとそうだった。
美麻への想いを断ち切る為に様々なタイプの女と付き合ってきた。 それなりに楽しかったけれど、長続きはしなかった。
どんないい女と付き合ったって俺の中の美麻が消える事はない。 分かり切った恋の結末を迎えると知りながら、彼女と付き合う事は出来ない。
どういえば彼女を傷つけずに諦めて貰えるか。
時間が進むのが遅い。
こじゃれたレストランのディナーは味気が全くなかった。
腕にはめられている時計ばかり見つめ、時間が流れるのを待つばかりだ。
「じゃあ、ここで」
21時過ぎ、彼女を自宅マンションまで送っていった。