【完】傷だらけのプロポーズ
「ええ、朝比奈さんが私の事なんて何とも思ってない事、分かっています。
朝比奈さん、なんだかんだ優しいからきっぱり私の事離せないんですよね。
だって、東日百貨店に勤めている友達に聞いたし、私と朝比奈さんが付き合っている噂が流れているって。
そんな噂流れちゃったら、きっと優しい朝比奈さんは無下に私を扱えないでしょう? 私、そういう朝比奈さんの優しさにつけこんでいるんです」
笑いながらも、彼女は真っ直ぐに俺を見上げた。 少し誤解をしていたかもしれない。 もっと嫌な女かと思っていた。
自分が可愛いと知りながら、自信満々で、いかに優秀な男を落とせるかしか考えていないような女かと。
肩を落として後悔をしたのは自分の方だったのだ。
「ごめん、真澄ちゃん…」
「ちょっと、朝比奈さんが謝らないで下さいよ。 今のは私が嫌な女っていうただの暴露です。
事実、私が朝比奈さんに近づいたのは仕事が出来るって評判で、周りから人気者だったからですし。
だけど朝比奈さんってもっと軽い人かと思ったのに、何とも思っていない私にもすごく優しくってやっぱり素敵な人だなあって」
「いや、俺は真澄ちゃんが思ってるような男ではないよ」